東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科

高血圧に関する研究

糖尿病、高血圧症、脂質異常症の存在は心血管イベントリスクであり、またそれらの合併がさらにリスクを増大させることが知られています。治療は血糖値、血圧値、コレステロール値を低下させることですが、血糖値、血圧値は下げすぎても治療効果は得られず逆効果となることもあり、その原因の一つとして絶対値ではなく「変動」が抑制されていないためである可能性が示唆されています。近年、血糖値、血圧、中性脂肪の「変動」が心血管イベントの増悪や糖尿病合併症の増悪を来すことが報告されてきており、私たちは糖尿病、高血圧症、脂質異常症の病態の中でも「変動」に注目し、それらの発生、心血管疾患に結びつく機序の解明に取り組んでいます。

当研究班は現在までに、スポーツ心と高血圧性心肥大においての遺伝子プロファイリングにてHeat Shock Proteinが生理的心肥大では心筋保護的に働くこと(Sakamoto M, Kayama Y et al. Circ Res 2006)、高血圧性心不全の発症にアラキドン酸代謝酵素が心臓の炎症に関与する報告を行い(Kayama Y, Sakamoto M et al. J Exp Med 2009)、さらにその因子が糖尿病性心筋症に関わることを見出しました(Suzuki H, Sakamoto M et al. Diabetes 2014)。現在はそれらの結果を踏まえ、血糖値、血圧値の「変動」が心機能に与える影響を検討しています。また基礎研究だけに留まらず臨床研究も積極的に行い、さらにそれらを融合したトランスレーショナルリサーチ、自宅バイタルモニタリングシステムの開発まで幅広い活動を行っています。

取り組む疾患多様性だけでなく、多方面の視点を持つことで得られる“新しい着眼点”を常に意識し、実臨床の治療に繋がることを念頭に様々な研究に臨んでいます。

現在行っている具体的な研究テーマ

<基礎>

1.糖尿病性心筋症と12-LOX

糖尿病では心不全が多く、さらに糖尿病の存在は心不全を増悪させることが知られているが、その機序は明確ではなく、また古くより概念が提唱されている糖尿病性心筋症の関与に関しても詳細は不明であった。我々はストレプトゾトシンを投与した糖尿病モデルマウス(糖尿病性心筋症モデル)において、12/15-リポキシゲナーゼ(LOX)のノックアウトマウスでは心機能低下が抑制されることを示し、高血糖が引き起こす心臓由来の12/15-LOXが酸化ストレスを介し心筋症を発症させていることを報告した(Suzuki H, Sakamoto M, Kayama Y, Iuchi H et al. Diabetes 2014)。

2. 血糖変動と血圧変動の共通メカニズムとしての圧・化学受容器の制御機構

J-VACS(UMIN000007957)より得られた血糖変動と血圧変動が相関するメカニズムの機序として、圧・化学受容器の相互作用に注目。高血圧合併2型糖尿病モデルラットに対し、圧・化学受容器の各経路をブロックすることでの病態変動をTelemetryシステム使用下で解析。

3. グルコースモニタリングによる血糖変動のマーカーとしての役割

Glucose telemetryを使用し血糖変動を測定。糖尿病合併症の進行における血糖変動のマーカーとしての有用性、血糖変動と代謝経路に関してプロテオーム、メタボローム解析を使用。
*メタボローム解析:生体内に存在する全代謝産物を網羅的に探索する次世代の解析方法。

<臨床>

4. 血糖変動、血圧変動、脂質変動に関わる因子の解明

境界型糖尿病、2型糖尿病における高血圧、脂質異常症発症、増悪機序の解明。インスリン抵抗性、インスリン分泌能、圧受容器反射、交感神経活性、CAVI、頸動脈肥厚などの動脈硬化との関連の検討。脈圧値によるARBの抗炎症作用の差の報告(Sakamoto M et al., Suzuki H et al. Cardiovasc Diabetol 2013)。

5. 血糖変動に各糖尿病薬が与える影響

Continuous glucose monitoring(CGM)を使用し入院にて各薬剤が血糖変動に及ぼす影響の解析。DPP4阻害薬間での差の報告(Sakamoto M et al. Cardiovasc Diabetol 2012)。CGM解析ソフトウェアの開発(特許出願中)。

6. 自宅モニタリングシステム開発

自宅での連続的生体情報測定用デバイスの開発、自宅での生体変動をデータベースに集約し、各測定値の短期〜長期的変動抑制に対する取り組みを実践。iPhoneと自宅モニタリングシステムのコラボレーション、iPhone/iPadの個人臨床応用(井内裕之著 医療に必ず役立つiPhone/iPad)。

チーフ

講師 坂本 昌也 平成9年卒

活動学会


受賞・研究助成

留学先

国外 Stanford University School of Medicine Division of Cardiovascular Medicine, USA
国内 東京大学大学院医学系研究科循環器内科
千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学

高血圧班グループは「明るく、楽しく、活発に」をモットーに活動を繰り広げていますので研究にご興味ある方はいつでもご連絡ください。新しい知見を一緒に見つけましょう。
(連絡先 坂本昌也:m-sakamoto@jikei.ac.jp