膵ランゲルハンス島の分子生物学的研究
2型糖尿病は従来、インスリン分泌不全とインスリン抵抗性が原因とされてきた。しかし2014年、Ungerらにより「グルカゴン中心説」が提唱され、耐糖能障害においてインスリン以上にグルカゴンが重要と考えられるようになった。
近年は、糖尿病における細小血管障害、耐糖能異常、膵β細胞死、膵α細胞からのグルカゴン分泌に、Protein kinase C (PKC) δの関与が注目されている。PKCδはnovel PKCに属し、細胞増殖・分化・アポトーシスに関与する分子であり、糖尿病マウスでは網膜症や腎症の進展に関与することが報告されている。
当研究班は、インスリン・グルカゴンとPKCδの関連を明らかにし、新規糖尿病治療薬の開発につながる研究を進めている。

主な研究テーマ
1. 膵α細胞からのグルカゴン分泌にPkcδが関与する
当研究班は2024年、膵α細胞特異的PKCδノックアウトマウスを用いて、マウス膵α細胞におけるアルギニン応答性グルカゴン分泌にPKCδが関与することを明らかにした(Honzawa N. IJMS. 2024)。現在は、グルカゴン分泌機構のどの過程にPKCδが関与するのかを検討している。

2. ヒトPRKCD遺伝子多型がアルギニン応答性グルカゴン分泌に影響するか否かを明らかにする
1.で示したマウスにおけるアルギニン応答性グルカゴン分泌へのPKCδの関与を、ヒトにも応用し、現在は臨床試験を実施している。
被験者は50人を目標に糖尿病教育入院患者に対し、アルギニン負荷試験を行い、グルカゴン分泌に差があるかどうかの確認を行っている。

チーフ
准教授 藤本 啓
研究助成
- 2022年 日本糖尿病財団 ノボノルディスクファーマ研究助成(本澤 訓聖)
- 2018年 文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(C)(藤本 啓)
- 2013年 文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(C)(藤本 啓)
- 2012年 かなえ医薬振興財団 研究助成 (藤本 啓)
- 2011年 文部科学省科学研究費補助金 若手研究(B)(藤本 啓)
- 2011年 ノボノルディスクファーマ インスリン研究助成 (藤本 啓)
- 2006年 文部科学省科学研究費補助金 若手研究(B)(藤本 啓)
留学先
- Washington University School of Medicine in St. Louis, USA
- 群馬大学生体調節研究所 代謝シグナル解析分野
当研究班は糖尿病の病態に密接に関わる「膵ランゲルハンス島の分子生物学的」を中心として研究を進めております。
研究に興味のある若い研究者を心より深くお待ちしております。 (連絡先:藤本 啓 fuji@jikei.ac.jp )