東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科

疫学に関する研究

 疫学は、公衆衛生の一分野に属し、「人間集団における健康状態の分布を観察し、その規定要因を明らかにする学問」です。その目的は疾病の予防、寿命の延長、QOLの向上であり、糖尿病や内分泌の分野における臨床研究や基礎研究にも広く応用可能な学問分野です。

 疫学研究グループは、先代の主任教授である田嶼尚子名誉教授が立ち上げた研究グループです。現在は西村理明がリーダーを務めています。海外留学経験者も多く、海外の大学院で疫学もしくは公衆衛生学の修士を取得している者もおります。

【主な研究テーマ】

1. 持続血糖モニター(Continuous Glucose Monitoring: CGM)を用いた糖尿病の病態把握・臨床研究

 1型糖尿病、ならびに薬物を用いていない2型糖尿病患者における血糖変動パターンを把握し論文化してきました(図)。今後さらなる解析を進め、糖尿病診療の礎となるデータを逐次報告していきたいと考えております。
また、治療方針決定にもCGMは極めて有用なツールとなります。現在、数々の臨床研究を企画、実施し、16本を論文化しています。
 さらに、日本糖尿病学会から発表された、先進医療機器により得られる新たな血糖関連指標に関するコンセンサスステートメントの作成を当研究グループが主導いたしました。

2. 地域住民の生活習慣病ならびにインスリン抵抗性に関する研究

 新潟県津南町(豪雪で有名、かつ新潟県屈指の長寿町)において、住民健診のデータを解析して生活習慣病の特長を明らかにしようとしています。また、中学生を対象に空腹時採血を行うことによりインスリン抵抗性や食生活の詳細について検討しています。その結果、COVID-19パンデミック期間にBMIや肥満に関わらず、中学生のインスリン抵抗性を示す割合の著しい増加がみられました(Suganuma Y. Pediatr Obes. 2023)。  また、現在、健診活動自体は停止していますが、埼玉県伊奈町において行ってきた小児生活習慣病の健診データを昭和大学公衆衛生学教室と共同して解析し、17本の論文が受理されており、さらなる論文化をすすめています。

3. 小児期発症1型糖尿病の長期予後調査

 本調査は、1965-79年に日本全国で診断された1型糖尿病患者の長期予後を追跡しています。その成果は海外のトップシャーナルに10本以上掲載されています。本研究は、世界に類を見ない研究であり、今後ともその成果を公表していく予定です。

チーフ

教授 西村 理明

受賞

研究助成

留学先


 疫学ならびに臨床研究は、日常臨床で生じた疑問を科学的に直接解析できることが最大の魅力です。当グループには、上述した様に多岐にわたる臨床研究を行える環境が整っておりますので、ご興味がある方の入局をお待ちしております。